トンボの生態について
親のトンボがさまざまな水辺環境に産んだ卵は孵化したのち多くの脱皮(シオカラトンボでも10回近く)を行い成長し、水ぬるむ4月頃から水辺で羽化し大人のトンボとなります。トンボは非常に飛行能力に長け、近隣の様々な水辺環境に産卵しますが台風に乗って南方から迷入してきた種が採集されたり一時的に定着することもあります。
ヤゴから見るトンボの種類
シオカラトンボ
田んぼや池、浅い水路等で見られる一般種で典型的な「トンボ型」のヤゴ。砂や泥に半ば潜り生活する「半待ち伏せ型」です。
コヤマトンボ
浅い河川や湖沼に生息し脚の長い「トンボ型」のヤゴといった感じの中・大型種で、捕食スタイルは「半待ち伏せ型」。「ヤマトンボ亜科」のトンボは大型で黄色と黒のシマシマで悠然とパトロール飛行する姿もあいまって、オオヤマトンボあたりが「オニヤンマ」ラベルで小学生の標本箱に入っていることが多々あります。
オニヤンマ
砂泥・砂礫底の細流などに生息する大型種。「トンボ型」ヤゴを大型化したようなスタイルで、こちらも主に底床に潜って獲物を待つタイプです。「ヤンマ」と付きますが「ヤンマ科」ではない「オニヤンマ科」に属します。
ギンヤンマ
コシボソヤンマ
スマートな体型の大型種で主に河川・湖沼の水草や落ち葉などにつかまって生活しています。運動性にも長けており、泳いでいる小魚を器用に捕食することもできます。真性の「ヤンマ」で「ヤンマ科」に属します。
ヤマサナエ
「サナエトンボ類」は自然度が高い河川の大きな石の下や砂礫底に住む「待ち伏せ型」の小~大型種。大半が扁平な体型をしており、また他属のヤゴと違い触角が棍棒状・板状という変わった特徴を持ちます。動作は緩慢で活発に泳ぐ魚等を捕食するのはかなり苦手です。
イトトンボ
蝶のように翅を縦に閉じる「均翅類」のトンボで、ヤゴは尾端に3枚の大きなヒレを持ちます。「ヤンマ科」のヤゴと同様の環境でよく見られますが、細身・小型のため獲物はミジンコや魚の稚魚等の小さい生物がメインのようです。
飼育について
倒れないツメがかりの良い足場が聖子の秘訣
金魚やメダカを飼育する一般的な飼育用具(ケース、エアポンプ、投げ込み式フィルター)があれば問題なく飼育できますが、肉食性のため過密に飼育すると共食いが避けられません。少ない匹数を確実に羽化させるのであればこまめな換水前提で、小型のタッパーケース等で個別管理するのが飼育者にとっても楽かもしれません。餌は目の前でピンセットなどで揺らせてやれば冷凍アカムシやシラス等でも十分つかえます。また生き餌(アカヒレ、メダカ)を与える場合にはヤゴの「捕食スタイル」によって投入する匹数や水位を調整すると給餌効率が良くなります。極端な例ですが「待ち伏せ型」で動きの緩慢なサナエ類の飼育で「水位を高くし生き餌を少数匹」入れた場合最悪捕食できずに餓死する場合もあります。
羽化にあたって
未熟個体の翅芽。まだペラペラです
成熟個体の翅芽。かなりふくらんでおり、羽化が近いことがわかります。
オニヤンマの羽化。足場に上って脚をガッチリ固定
オニヤンマは倒垂型の羽化スタイル。かなりアクロバティックです。
起き上がって翅を伸ばしていきます。
羽化完了!色付いたら大空へ羽ばたいていきます。
十分に成長し水温も上昇する時期になるとヤゴはマジックハンド状の捕食器官である「下唇(かしん)」内部が退化し餌を食べなくなり、多くの場合、1~2週間内に羽化しトンボになります。羽化直前のヤゴは背中に生えた短い翅「翅芽(しが)」がパンパンに膨らみ、折りたたまれたトンボの翅がはっきり見えることでも判断できます。羽化は大半のグループで抽水植物や杭などに登っておこなわれますので、ケース内に流木などを倒れないように設置します。例外的にサナエ類は水上に出た岩の上などでも器用に羽化でき、体型的にも棒などに登らせるより安全に羽化できるようです。
さて今回は感動的な羽化観察が体験できるトンボの幼虫「ヤゴ」の飼い方について紹介しました。
機会があればぜひ一度飼育にチャレンジしてみてくださいね♪
TO wrote it