アカヒレ Tanichthys albonubes
タニクチス属の最メジャー種で通称の“アカヒレ”の方が通りが良いコイ科小型種。属名“タニクチス”は本種の発見に関わったタン少年に、また英名の“White cloud mountain minnow”は発見地で現在は観光地としても有名な白雲山に因むものです。主な原産地は中国・広東省ですが、近年、東南アジアのコイ科魚類に造詣の深いスイス出身の研究者モーリス・コテラット氏らにより、本種のベトナム北部おける産地が報告されています。価格の安さから雑に扱われがちな本種ですが実際色彩の揚がった♂個体は非常に美しくなり、また低水温にも十分に耐える“丈夫さ”を兼ね備える、文句なしの優良種でもあります。
ゴールデンアカヒレ Tanichthys albonubes var
評価が「ゴールデンの名の通りキレイ!」と「ヒメダカみたいで嫌!」に二分されている印象がある“アカヒレ”の黄変改良品種。丈夫さ・赤いヒレはそのままに体が明るいクリーム色に染まります。
タニクチス ミカゲムマエ Tanichthys micagemmae
通称“ベトナムアカヒレ”。ベトナムはバウユン川産の美麗種。白っぽい下地に赤・金・紺のくっきりしたラインが入り、それまで知られていた同属他種より明らかにメリハリの効いた色彩を持ちます。本種が小型コイ類屈指の美しさを持ちながら、いまいちメジャーになりきれない要因のひとつに“アカヒレ”の名前が付いていることがイメージ的にマイナス・・とよく語られる不憫系の美魚といえます。前述の“ベトナム産アカヒレ”と紛
らわしい通称ですが、もちろん一見して見分けのつく別種です。体格は元祖アカヒレよりも一回り小型。
タニクチス タックバエンシス Tanichthys thacbaensis
“ラオスアカヒレ”の名前で流通している美麗種。原産地はとりあえずラオスらしいんですが同種・近似種と思われるものがベトナム国内で採集されているという報告もあります。色彩に関しては前種によく似たパターンを持ちますが、ヒレは強く黄色味を帯び、体側に金と青の混じったメタリックグリーンのラインが入るとても美しいものです。入荷頻度は現在のところ非常に少ないようです。
ロングフィンアカヒレ Tanichthys albonubes var(T.linni)
一般には改良品種とされますが、ヒレのカラーパターンの違いなどから元祖アカヒレとは大元の魚が別種なのでは?とか古くから言われているお魚。特に“カージナルアカヒレ”称される強い赤み・長いヒレのものは、その軽やかな泳ぎもあいまって少数でも見る者に非常に華やかな印象を与えます。あくまで主観ですがノーマルのアカヒレに比べて耐寒性が低い気がしなくもないのですが・・・。
飼育について
元祖アカヒレはとても丈夫!!
元祖アカヒレに関しては熱帯地方ほど高温の地域産ではなく、氷の張らない程度までの耐寒性・環境の変化にも十分耐えられる丈夫さを兼ね備えたお魚であるため、一般的な“観賞魚飼育水槽セット”であれば飼育初心者の方にも容易に飼育できるはずです。ただし本属のニューフェイスであるミカゲムマエは耐寒性がないらしく、また近似種であるタックバエンシスも同様と思われますので、こちらを飼育する際には熱帯魚用のヒーターの使用が必須となるでしょう。
繁殖について
本グループはコイ科小型種のなかでも繁殖の容易な部類に入り、感覚的には“ニホンメダカ”とあまり変わらないと思います。ばら撒き型で産卵される卵自体もかなり丈夫で、卵を食べるような生物のいない常識的な範囲の飼育環境下であれば稚魚の姿を見ることは難しくないようです。
さて今回は“安価な駄物”のイメージで明らかに損をしている美魚集団・アカヒレの仲間を紹介しました。機会があればぜひ一度飼育・繁殖にチャレンジしてみてくださいね♪
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